「雑味がない」おいしいコーヒーを作るには

おいしいコーヒーをイメージしたとき、どんな味を想像されるでしょうか。
「味に深みがある」「苦みと酸味のバランスがいい」「香りがいい」などが浮かぶのではないでしょうか。
ほかにも、「濃さや温度がちょうどいい」というのも、おいしさを十分感じるためには必要な要素です。

そのほかに、「雑味がない」というのも、おいしいコーヒーに欠かせない大切な条件ということはご存知でしょうか。
雑味があると、コーヒー本来の味や香りを邪魔してしまうからです。

ここでは「雑味がない」コーヒーを作るためにはどのようなことに気を付ければいいのか、そのポイントや、雑味の原因などについてくわしくご紹介します。

1.コーヒーの雑味とは

味覚は「苦味・甘味・酸味・コク・旨味」という5つの要素からできています。
中でもコーヒーの味は、「苦味」と「酸味」の絶妙なバランスで決まります。
このバランスがうまくとれているとき、私たちはコーヒーを「おいしい」と感じるのです。

雑味は、コーヒー本来の味わいを邪魔してしまう本来の味覚に含まれない余計な味です。
農薬や防カビ剤などの「不純物」や、抽出の温度や豆の挽き方、焙煎度合いなど、さまざまな要素によって「えぐみ」「渋み」などの雑味が出ると言われています。

2.雑味の原因と雑味をなくすためにできること

ここでは、コーヒーの雑味の原因と、雑味をなくすためにできることについてくわしくご紹介します。

(1)農薬や化学肥料

コーヒーは熱帯植物ですので、暑い地方特有の虫害や病気があります。
そういった生育の妨げになる虫や病気の原因菌を寄せ付けずに育てるために、農薬が使用されます。
また、朝夕の寒暖差が激しい高山でおいしいコーヒー豆が実るとも言われていて、そういった高度の高い地域はやせた土地が多いため、効率よくコーヒー豆を栽培するために化学肥料が使用されます。
こういった農薬や化学肥料がコーヒー豆に混入すると雑味となります。

こうした雑味を取り除くためには、無農薬・無化学肥料の豆を使う必要があります。
農薬や化学肥料は効率的な農業に必要な農法ですので、これらを使わない無農薬・無化学肥料の豆を育てるには、通常より手間ひまがかかるため、取引価格は高くなります。
山王珈琲焙煎所では、無農薬・無化学肥料で育てたハイグレードな生豆のみを使用して焙煎しています。

(2)防カビ剤・防腐剤

現在日本国内で流通しているコーヒー豆は、ほぼすべて輸入品となります。
一般的な流通経路は船便で、熱帯地方から蒸し暑い船底の常温コンテナで1か月ほどかけて日本に送られます。

収穫後、輸送中や貯蔵中にカビや病害虫、腐敗が発生しないよう、ポストハーベスト燻蒸といって、防カビ剤や防腐剤などの農薬で燻蒸します。
成育中の農薬より、収穫後の農薬処理の方が残留量は多いと言われています。
有機JAS認証の生豆はポストハーベスト燻蒸を行わないため、コンテナ内での虫食い・カビのリスクが高くなります。

また、真空パックや冷蔵輸送、空輸によって薬剤を使わずに病害虫やカビ、腐敗のリスクを下げている豆もありますが、パッキング前の工程でカビ豆が混入することもあります。
こうした残留薬剤やカビ菌、虫食い豆などはすべて雑味の原因となります。

こうした防カビ剤・防腐剤などを除去するためには、生豆を焙煎する前に「お湯洗い」という工程をはさみます。
50℃のお湯でていねいに手洗いすることで、輸送・貯蔵時に燻蒸された薬剤を落とすだけでなく、カビの胞子や生産地でコーヒーの豆にしみ込んでいる現地の水も抜くことができます。

お湯洗いについて、くわしくはこちらをご覧ください。

▶無農薬・無化学肥料の豆を使うこだわり

(3)豆が古い

古くなったコーヒー豆は酸化して酸っぱくなったり、香りが弱まったりすると言われています。
こうしたバランスを欠いた味わいも雑味として感じられます。

実はコーヒーの生豆には賞味期限がありません。
ですので、「コーヒーの賞味期限」という場合、一般には焙煎したあとのコーヒーの消費期限を指して言います。
焙煎後、挽く前のコーヒー豆の賞味期限はおよそ2か月です。
焙煎方法や包装の仕方によっても消費期限は変わるため、袋に記載されていない場合は購入店に確認しましょう。

豆が古いことによる雑味は、焙煎後の鮮度にこだわり、賞味期限を守ることで防ぐことができます。
さらに、おいしく飲むためのコツがあります。それは、焙煎後の熟成期間を置くことです。
鮮度と矛盾するようですが、焙煎してすぐのコーヒー豆は味のまとまりがなく、本来のおいしさを十分に引き出すことができません。

山王珈琲焙煎所で焙煎したコーヒー豆の場合、浅煎り~中煎りでおよそ1週間、中煎り~深煎りでおよそ2週間の熟成期間を置くとおいしく召し上がっていただけます。
熟成中は酸化を防ぐために密閉容器に入れ、直射日光の当たらない場所で保管しましょう。
冷蔵庫に入れると熟成が止まってしまうため、常温で保存します。
豆の芯までしっかりと熱が通っている山王珈琲焙煎所の豆は、常温保存が可能です。
熟成が完了してから、飲む分だけ少量ずつ挽きましょう。

挽いた後の保存期間はおよそ1週間です。酸化しやすくなるため、密閉して涼しい場所で保管しましょう。
夏場は5日、冬場は2週間以内で飲み切るようにしましょう。

<コーヒーの生豆には賞味期限がない?>

コーヒーの生豆には保存期間の基準がありません。
高温多湿を避け、直射日光の当たらない涼しい場所で保管すれば数年間の保存が可能とされています。

その年に収穫された新しいコーヒー豆を「ニュークロップ」、1年前に収穫されたものを「パーストクロップ」、2年以上前に収穫されたものを「オールドクロップ」と呼びます。
ニュークロップは水分量が多く、緑色がかっていますが、長期保存によって徐々に水分が抜け、黄色っぽく変化していきます。
保管場所や保管条件にもよりますが、オールドクロップになると、水分と一緒に徐々に風味が失われると言われています。
風味豊かなコーヒーを味わうには、収穫から2年程度までには焙煎して飲むのがいいでしょう。

(4)虫食い豆、欠けた豆、不揃いな豆による焙煎の偏り

欠けた豆や不揃いな豆をそのまま焙煎すると、雑味の原因になります。
カビ豆は悪臭の原因に、欠け豆や虫食い豆は、そこから傷んでカビが生えたり腐敗したりしていることがあります。
また、十分な大きさに育っていない未熟豆は生臭さの原因にもなります。

山王珈琲焙煎所では、こうした虫食い豆、欠けた豆、不揃いな豆は、焙煎前に広げて目視し、ハンドピックで取り除きます。
焙煎前にていねいに不良豆を取り除くことで、雑味のないコーヒー豆を作ることができます。

(5)焙煎度合い

焙煎度合いによっても雑味は生じます。
浅煎りの豆は豆の持っているフルーティーな香りや酸味を楽しむことができますが、焙煎度合いが浅すぎて十分に火が通っていないと、えぐみや渋みが出ることがあります。
逆に深煎りをしすぎると、苦みが強すぎておいしくありません。

焙煎したコーヒー豆を割ってみて、表面と真ん中の溝の間の空気穴付近が黒く焦げている場合は焙煎が深すぎるサインです。
えぐみや強すぎる苦みは雑味として感じられます。
豆に合った焙煎度合いがありますので、バランスよく焙煎することが、雑味のないおいしいコーヒーを作るのに大切です。

(6)挽き方

コーヒー豆の挽き方が細かすぎると雑味が出やすくなります。
ドリップしたときにお湯に接する面積が多くなり、苦みが抽出されすぎてしまうことが原因とされています。
特定の味が強すぎるとバランスを欠いた味わいになり、雑味として感じられます。

豆の挽き方には「極細挽き、細挽き、中細挽き、中挽き、粗挽き」の5種類があります。
粗すぎても豆の成分が十分に抽出されず、薄い味のコーヒーになってしまいます。
逆に市販のコーヒーミルなどで細かくなりすぎてしまう場合は、焙煎所で挽いてもらいましょう。
挽いた豆は賞味期限が短くなるため、注意が必要です。

(7)お湯の温度

コーヒーの抽出に最も適した温度は85℃~90℃くらいです。
ぐつぐつ沸騰したお湯でコーヒーを抽出してしまうとコーヒー本来のコクやまろやかさが失われ、えぐみなどが出て、雑味のあるコーヒーになってしまいます。
雑味のないコーヒーを淹れるためには、抽出に適した温度で淹れましょう。

(8)灰汁が出ている

コーヒーを淹れたときにフィルターにつく細かい泡は灰汁(アク)です。
フィルターを通り抜けて灰汁がコーヒー液に混ざってしまうと、灰汁に含まれるえぐみや渋みなどが出てしまいます。
コーヒーカップに灰汁が浮いた場合は、スプーンなどで取り除きましょう。

3.「雑味のない」おいしいコーヒーの淹れ方【動画】

いかがでしたでしょうか。
雑味のないおいしいコーヒーを淹れるためのポイントについてくわしくお伝えしました。

こちらの記事を参考に、ぜひ雑味のないおいしいコーヒーを召し上がってみてください。