無農薬・無化学肥料の豆を使うこだわり

コーヒーは熱帯性の高山植物で、コーヒーベルトと呼ばれるコーヒー栽培が盛んな地域は緯度25度までの赤道近くの熱帯地域の、しかも昼夜の温度差がある高山地方に限られます。

四季があり、冬の寒さも厳しい日本はコーヒー栽培に不向きで、沖縄や鹿児島の離島、小笠原諸島などのごく一部で国産コーヒーが栽培されていますが、台風や高度不足などがコーヒー栽培に適さないため安定供給が難しく、現在一般流通はしていません。

野菜や果物などでは「国産」は安心のブランドというイメージがありますが、今、日本で身近に飲まれているコーヒーは、ほぼすべて海外からの輸入品になります。
輸入されたコーヒー豆でも、安心・安全で健康的なコーヒーをお客様に飲んでいただくことが可能です。
ただ、そのためにはたくさんの知識や工夫、こだわりが必要です。

ここでは、私たち山王珈琲焙煎所がこだわりを持って選んでいる、無農薬・無化学肥料の豆についてくわしくご紹介します。

1.無農薬・無化学肥料コーヒーとは

山王珈琲焙煎所で取り扱うコーヒー豆は、厳選された無農薬・無化学肥料で育てられた豆に限定しています。

熱帯地方で育つコーヒー豆は、温かい地方特有の虫害があります。
また栽培に適した高山地方は、肥沃な河川周辺の低地にくらべて土地がやせていることが多く、栄養豊富なコーヒー豆を育てるための土づくりが難しいという特徴があります。

そこで、一般的なコーヒー農園では虫がつかないように農薬を使い、やせた土地でもよく育つように化学肥料を使うことが少なくありません。
無農薬・無化学肥料でおいしいコーヒー豆を育てるのは、技術的にとてもむずかしく、手間がかかることなのです。

そうした手間ひまをかけて育てるため、無農薬・無化学肥料のコーヒー豆は、同じグレードにあるほかの一般的なコーヒー豆よりもどうしても価格が高くなってしまいます。
しかも、いくら無農薬・無化学肥料でも、コーヒーの味がおいしくなければ意味がありません。

私たちは、安心・安全・健康的で、しかもおいしいコーヒーをお客様に楽しんでいただきたいという思いから、こだわりを持って無農薬・無化学肥料コーヒーを選び、その中からさらにハイグレードな豆のみを厳選してご提供しています。

2.焙煎前だからできる「豆を洗う」という工程

山王珈琲焙煎所では、厳選して仕入れたコーヒー豆を、焙煎前にさらに「洗う」という工程をはさみます。
これも安心・安全で健康的なコーヒーを味わっていただくために欠かせない工程ですので、この章でくわしくご紹介します。

(1)無農薬・無化学肥料のコーヒー豆でも洗った方がいい理由

焙煎前のコーヒー豆は生の状態です。
ご家庭では生の野菜を買ってきたとき、茹でたり炒めたりする調理の前に、いったん洗うのではないでしょうか。

農薬を落とす意味もありますが、たとえ無農薬の野菜であっても、スーパーや産地でいろいろな人の手や場所に触れているものですから、口に入る前に一度洗ってリセットしたいと思うのは自然なことでしょう。

コーヒー豆も同じです。無農薬・無化学肥料の豆でも、収穫や輸送の過程で汚れが付着します。
まして国内で生産されたのではなく、海外から手元に来るまで長い旅をしてきた豆です。
どんなに品質管理をしていても、ある程度の汚れは付着してしまいます。

また、コーヒー豆は船で輸送されることも多いため、長く船底で常温保存されるために豆の一部にカビが繁殖することがあります。
もちろんカビの生えた豆は製品加工される工程で取り除かれますが、表面にカビの胞子が付着することがあります。
カビ菌は焙煎の加熱工程で死滅しますが、焙煎の前にカビの胞子そのものを取り除いておかないと、カビ毒はそのまま残ります。

収穫や輸送の過程で生豆の表面についてしまった汚れを落とすため。
そして、輸送の過程で発生し付着したカビの胞子を除去するため。
これが無農薬・無化学肥料のコーヒー豆でもしっかり洗った方がいい理由です。

実はこうしたことはあまり一般的には知られていないため、コーヒー豆を生豆で買ってきた場合に、袋から取り出して洗わずにそのままロースト(焙煎)してしまうケースが少なくありません。
もちろん焙煎後のコーヒー豆を洗うとせっかくのローストした風味が台無しになってしまうので、洗えるのは生の状態のときだけです。

ご自分で生豆を買ってきて焙煎される場合には、ぜひ洗ってから焙煎すること。
そして、焙煎済みのコーヒー豆を購入される場合には、コーヒー豆を洗ってから焙煎するメーカーから購入されることをおすすめします。

(2)コーヒー豆の洗い方と水蒸気焙煎

ここでは、どうやってコーヒーの生豆の洗うのか、実際の洗い方と、安心・安全なコーヒー抽出に欠かせない水蒸気焙煎についてくわしくご紹介します。

  • 50℃のお湯洗い

私たち山王珈琲焙煎所ではコーヒー豆を洗うとき、50℃のお湯で手洗いします。
手作業でやさしくしっかり洗うことで、豆を欠けさせることなく、表面の汚れやカビの胞子をしっかり落とすことができます。コーヒー豆を洗ったあとのお湯の色を見たら、あまりにも濁っているので驚かれる方もいるかもしれません。

  • 水蒸気焙煎

洗った豆は乾かさずに濡れたまま焙煎します。
焙煎機の均一な熱の伝わりによって豆の芯まで熱が伝わり、蒸し焼き状態に。
こうすることで、輸出前に収穫後のコーヒーの果実からコーヒー豆(種)を取り出す発酵の工程で豆の中にしみ込んでいた生産地の水を抜くことができます。
この水蒸気焙煎も豆を洗う工程と同じくらい、安心・安全なコーヒーをつくるために欠かせない工程です。

おいしいコーヒーのくわしい抽出方法については、こちらの記事をご覧ください。

▶「雑味がない」おいしいコーヒーを作るには

3.山王珈琲焙煎所で使っているこだわりの豆

ここでは、山王珈琲焙煎所で使用している、こだわりのコーヒー豆についてくわしくご紹介します。

(1)エチオピア Habtamu (ナチュラル)|中深煎り

アフリカのエチオピアでHabtamu(ハブタム)さんという生産者が育てたコーヒー豆です。
生産者の名前をそのままコーヒーの名前にするくらい、誇りと自信を持って栽培されている豆です。

エチオピアのコーヒー豆は、世界のコーヒー産地の中でもとくに熟成したワインのような芳醇な香りが特徴。
中でもHabtamuのコーヒー豆は、赤い成熟した実だけを大切に摘み取り、ナチュラル製法という果実のまま自然乾燥させる製法で作り上げられています。
苦みが少なく、深いコクと香りが特徴の豊かな味わいをお楽しみください。

(2)コンゴ リビルド ウィメンズホープ フェアトレード|中煎り

アフリカのコンゴ、南ギブ州イジュヴィ島で栽培されているコーヒー豆です。
コンゴでは現在でも男性優位の風習が根強く残り、なかなか女性の権利や安全が保障されづらい状況にあります。
そんな中で、女性の自立と活躍を支援する「リビルド ウィメンズホープ」というコーヒー生産者団体が作り上げたコーヒー豆です。
フェアトレードで取引されている製品のため、現地の生産者の方々の生活向上にも貢献できます。

クセのない落ち着いた酸味と爽やかな香りが特徴の豆で、この豆ならではのフルーティー酸味を楽しむために、中煎りでご提供しています。

(3)ボリビア ビオ アラビカ 有機栽培 フェアトレード|中深煎り

ウユニ塩湖で有名な、南米中央部に位置するボリビア共和国で生産された豆です。
ボリビアの先住民族であるアイマラ族やケチュア族の血を引く生産者たちが、農薬と化学肥料を使わずに有機栽培で育てているコーヒー豆です。
フェアトレード製品のため、彼らの生活向上にも貢献できます。
赤く熟した実だけをハンドピックで収穫し、現地でもよく洗って輸出しています。

この豆は、香り高く味がしっかりしているのに加え、ほのかな酸味と甘い後味が特徴です。
香りをさらに引き立てる中深煎りでご提供します。

(4)ペルー コチャパンパ 有機JAS認証生豆 フェアトレード|中煎り

南米ペルー共和国、空中都市マチュピチュのさらに奥地に位置するコチャパンパ地区で、無農薬・無化学肥料で栽培生産されているコーヒー豆です。
審査の厳しい有機JAS認証の生豆を100%使用。
標高2000mを超える高所の山奥で、インカ帝国の末裔とされる人々がすべて手摘みで収穫しています。
フェアトレード製品のため、彼らの生活向上にも貢献できます。

この豆は甘みと苦みのバランスが良いのが特徴。
甘い香りを損なわないため、中煎りでご提供します。

(5)ガラパゴスの宝石|中煎り

スペイン語で「赤道」を意味する、南米の赤道直下の国、エクアドルで栽培される、希少な豆です。
生産地であるガラパゴス諸島のサンタ・クルス島にちなんで名づけられました。

赤道直下にもかかわらず、冷たい海流と貿易風、火山活動による高い標高というコーヒー栽培にも適した特殊な環境のもと、ここにしかいない多様な動植物が生きるガラパゴス諸島。
その豊かな環境を損なうことなく自然と共生する循環型農法で育てられた、全世界でわずか4トンしか存在しない非常に貴重な豆です。

甘い香りとすっきりとした苦みとコクが特徴。
味わいを引き立てる中煎りでご提供します。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。
山王珈琲焙煎所で使用しているこだわりの無農薬・無化学肥料のコーヒー豆についてご紹介しました。

産地によりコーヒー豆の味は大きく変わります。
ぜひ厳選された豆を使用し、お湯洗いと水蒸気焙煎で磨き上げられた、安心・安全で健康的なこだわりのコーヒーを味わってみてください。